為替デイリーマーケットレポート(2026年9月28日・20時20分時点)
1. 現在の結論
28日の市場は「インフレ型リスクオフ」の色彩が強い。米国とイランの協議が停滞し、トランプ米大統領がイラン側の和平案を拒否したとの報道を受け、原油価格が急上昇した。WTI原油は午前の95.69ドルから一時99.63ドルまで上昇し、20時20分時点でも98.79ドル前後と朝方比約2.4%高にある。原油高がインフレと追加利上げへの警戒を強め、米株価指数先物、日本株、金がそろって下落した。
為替では円とポンドが相対的に強く、カナダドルとスイスフランが弱い。ドル円は朝方に157円台後半まで上昇した後、三村財務官による強い円安けん制を受けて156円台へ急落した。ただしドルは対ユーロでほぼ横ばい、対カナダドルとスイスフランでは上昇しているため、ドル円下落を全面的なドル安と解釈すべきではない。中心は円固有の買いである。
2. 本日の転換点
東京時間前半は、米金利上昇と追加利上げ観測を背景にドルが底堅く、ドル円は10時10分に157.86円まで上昇した。一方、原油は10時ごろに95.69ドルまで下落していたが、米・イラン協議の行き詰まりとホルムズ海峡を巡る緊張が再び意識されると反転した。午後には97ドル台へ上昇し、欧州時間には98ドル台後半まで上げ幅を拡大した。
為替の最大の転換は16時55分前後だった。三村財務官が、日本政府は最近の円相場に安心も満足もしておらず、日本の首相、財務相、米国から非常に明確なメッセージが送られていると発言した。また、日本が円買い介入を行う資金面の制約についても懸念は全くないと述べた。ドル円は16時50分の157.54円前後から、16時55分に157.23円、17時には156.68円まで急落し、17時20分には日中安値156.50円を記録した。
その後は157円台を一時回復したが、20時20分時点では156.95円前後にとどまっている。発言前の157円台半ばを回復できていないため、円安けん制の影響は現在も残っている。
3. 現在の主要因
第一の主要因は中東情勢と原油である。米国とイランがホルムズ海峡再開などを巡って合意できず、米大統領がイラン側の提案を拒否したとの報道で、原油供給不安が再燃した。イラン最高指導者の強硬発言も警戒を強めている。原油高は単なる商品市場の問題ではなく、インフレ期待、政策金利、債券利回り、株式の評価に同時に波及している。
第二の主要因は世界的な債券利回り上昇である。米国債の売りが続き、原油高によるインフレ懸念が追加利上げ観測を補強している。欧州でもドイツ国債利回りが高水準となり、英国ではラムスデン英中銀副総裁がインフレリスクは上方へ傾いており、圧力が続けば政策金利引き上げの可能性があると述べた。
第三の主要因は日本当局の円安けん制である。先週の日米首脳会談を巡る円安懸念に続き、本日は三村財務官が介入能力への疑念を明確に否定した。ドル円が発言直後に大きく下落し、その後も発言前水準へ戻っていないため、市場が発言を実質的な警告として受け止めたことが価格面でも確認できる。
中国では米国との一部関税引き下げや、不動産市場安定策、債券発行加速、景気対策強化の方針が伝わった。ただし、中国工業利益の伸び鈍化や世界的な金利上昇が重く、豪ドルや株式市場を全面的に押し上げるには至っていない。
4. リスクオン/リスクオフ判定
現在は通常型ではなく、インフレ型リスクオフと判断する。ナスダック100先物は朝方比約0.7%安、S&P500先物は約0.3%安、ダウ先物は約0.4%安、日経225は約0.9%安である。原油上昇と債券利回り上昇が同時進行し、特に金利に敏感な成長株へ圧力をかけている。
ただし、金が買われる典型的なリスクオフではない。金は朝方の4,276ドル前後から4,153ドル前後へ約2.9%下落し、一時4,141ドル近辺まで売られた。安全資産需要より、実質金利上昇と追加利上げ観測の悪影響が勝っている。スイスフランも弱く、資金が一様に安全通貨へ向かっているわけではない。
5. 主要通貨の評価
円は短期的に強い。三村財務官の発言後、主要な円相場で円買いが広がった。現在の円高は、世界全体のリスク回避だけでなく、介入警戒と円売り持ち高の巻き戻しによるものだ。156.50円付近を割り込むと、156円方向への追加下落が意識される。
ドルは全面高でも全面安でもない。高い米金利とリスク回避はドルを支えているが、対円では日本当局の警告に押されている。ユーロドルが朝方とほぼ同水準にある一方、ドルはカナダドルとスイスフランに対して上昇しており、通貨ごとの材料差が大きい。
ポンドは本日の主要通貨で最も強い。ポンドドルは朝方の1.3216前後から1.3263前後へ上昇した。ラムスデン副総裁がインフレ上振れと追加利上げの可能性に言及したことが支えとなっている。ただし原油高がさらに進めば、英国経済には物価高と成長鈍化の両面から負担となるため、単純なポンド買い材料ではない。
ユーロは対ドルで方向感に乏しい。朝方の1.1375前後から一時1.1391まで上昇したが、原油高と欧州金利上昇を受けて1.1366まで下落し、現在は1.1375前後へ戻している。エネルギー輸入負担とECBの引き締め観測が相殺している。
豪ドルとNZドルは午前に上昇した後、原油高と株安で上げ幅を縮小した。RBAの25bp利上げは広く織り込まれており、豪ドルには一定の支えがあるが、世界的なリスク回避と中国景気の不透明感が上値を抑えている。
カナダドルは原油高にもかかわらず弱い。ドルカナダは1.4166付近まで上昇している。通常なら原油高はカナダドルを支えるが、今回は世界的な金利上昇とリスク回避、ドル需要がそれを上回っている。この逆行は、市場が原油高を景気に好ましい資源高ではなく、供給不安による悪いインフレとして評価している証拠の一つである。
スイスフランは安全通貨として買われず、ドルスイスは0.8316前後まで上昇した。金の大幅安と合わせ、現在の市場が「安全資産買い」より「金利上昇に耐えられる通貨と資産の選別」を優先していることを示している。
6. 重要水準
ドル円は156.50円が直近の重要支持である。割り込めば156.00円が次の焦点となる。上値は157.20円、次いで三村発言前の157.50円が抵抗である。157.50円を明確に回復しない限り、短期的には戻り売りが優勢となる。
ユーロドルは1.1365が支持、1.1390から1.1400が抵抗である。ポンドドルは1.3275が上値抵抗、1.3240と1.3215が支持となる。豪ドル米ドルは0.7005が支持、0.7028が抵抗、NZドル米ドルは0.5648が支持、0.5674が抵抗である。
WTI原油は100ドルが心理的な重要水準となる。明確に突破するとインフレ型リスクオフが一段と強まりやすい。反対に97ドルを割り込み、株価指数が回復すれば、中東リスクの上乗せが縮小した可能性が高まる。
7. NY時間の基本シナリオ
基本シナリオは、原油と米長期金利をにらみながら、株式の上値が重く、ドルは通貨ごとに強弱が分かれる展開である。ドル円は157.20円以下では戻り売りが入りやすく、円安けん制の影響が続く。一方、ユーロドルや豪ドル米ドルは、原油高と金利上昇が続く限り上値を追いにくい。
リスクシナリオは、WTI原油の100ドル突破である。この場合、株安、債券安、金利上昇が加速し、豪ドル、NZドル、カナダドルなど景気敏感通貨への売りが強まりやすい。ドル円については米金利上昇がドルを支える一方、介入警戒が上値を抑えるため、他のドルペアとは異なる動きになる可能性がある。
反対のシナリオは、米・イラン協議再開や緊張緩和の報道で原油が急反落する場合である。原油が97ドルを割り、米株先物が日中高値方向へ戻れば、インフレ型リスクオフの判断は後退する。その場合でも、ドル円が157.50円を回復するまでは円高材料が消えたとは判断しにくい。
8. 判断を無効化する条件
円高継続の判断は、ドル円が157.50円を回復し、主要円クロスでも円売りが同時に再開した場合に無効となる。インフレ型リスクオフの判断は、WTI原油が97ドルを割り、米株価指数先物が朝方水準を回復し、主要国債利回りが低下へ転じた場合に弱まる。
本レポートは2026年9月28日20時までの情報と、20時20分までの価格に基づく市場分析であり、売買を推奨するものではない。

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